各ルートの解説
(4)社会人入試について

 最近、社会人入試を行う看護学校(レギュラーコース)が増えてきました。

 経済面では問題がなくても、学力面では不安がある、そのような方には、チャンスの一つだとも思われます。

 ここでは、社会人入試の全般的な特徴と問題点について、書いてみます。

(各学校の詳細については、なるかんさんのホームページ などを参考にして、最終的には、必ず当該学校に直接問い合わせてください。)


1.社会人入試の概略

 社会人入試は、ある一定以上の年齢の方などを対象に、小論文や面接を中心にした試験によって、合否を決めるものです。

 ただ、細かい部分については、各学校によって、かなり異なりますので、ご注意ください。

2.受験資格はどうなっているのか

 具体例として、都立のレギュラーコースの受験資格を示します。

つぎのいずれにも該当する者
(1)心身ともに健康であり、卒業後看護婦・看護士として都内に就業の意思がある者。

(2)高等学校又は中等教育学校の卒業者(卒業見込みを含む)及び同等以上の学力を有する者。
 ※中等教育学校とは、いわゆる中学校のことではありません。

(3)満25歳以上(入学する年の4月1日現在で)の者。

(4)次のいずれかに該当する者
 ア 東京都内に入学する前年の4月1日以前から引き続き住所を有する者。
 イ 東京都内で入学する前年の4月1日以前から引き続き就業している者。

(5)合格した場合は、入学することを確約できる者。


(1)と(4)は、公立の看護学校では、つきものの条件だと思います。

(2)については、レギュラーコース自体の受験条件で、一般入試と同様です。

(3)については、社会人入試には、必須の条件です。ただ、何歳以上なのかは、学校によって異なりますし、上限を設定しているところもあります。

(5)については、社会人入試が一般入試とは違い、推薦入試の一つであることを示しています。

 この他にも、就業経験が一定年数以上あることが、条件になる場合もあります。(社会人入試ですから。)

 繰り返しになりますが、この部分は、各学校によって、異なるものです。必ず、個別のことは、自分自身で、お調べください。


3.試験科目はどうなっているのか

 いわゆる学科試験は課されないところが、多いのですが、学科試験があるところもないわけではありません。 社会人入試イコール学科試験がない、とは思いこまないようにしてください。

 通常は、小論文と面接、というパターンです。適性検査があったり、事前に自己推薦書を提出させたり、ということもありますが。


4.社会人入試の募集人数

 人数を明記しているところもありますが、全募集人数の10%以内とか、20%以内というパターンが多いようです。

 この場合、何%以内ということは、あくまで上限を示しているだけで、必ずその人数を取るということではありません。

 例えば40名募集で10%となると、実際には4名(以内)ということです。

 社会人入試そのものの募集人数は、非常に少ないものだと考えておいたほうが、よいでしょう。


5.併願は可能か

 先ほども書きましたが、社会人入試は、一般入試ではなく、推薦入試の1パターンと考えられます。

 ですから、「併願可」と明記していない場合には、「併願はできない」と思っていた方が無難です。

 ただ、募集要項では、判断がつきがたい場合もありますから、この場合もやはり直接学校に問い合わせてください。 思い込みで判断するのだけは、やめましょう。

 もちろん、不合格になった場合は、どの学校に願書を出してもかまわないのは言うまでもありませんが。


6.社会人入試は合格しやすいか

 社会人入試が行われることにより、今まで学力面の理由で、ためらっていた方たちにとっては、確かに「受けやすく」なります。

 ただ、そのことが、「合格しやすい」ということとは、結びつきません。

 なぜなら、募集人数そのものが少ないので、高倍率が予想されるからです。

 さらに小論文についても、「数学は解けなくても、小論文なら書ける」などと思っている人がいますが、 ただ、「書ければいい」のではなく、多人数の中で高い評価を得られるようなものを書かなければならない。 そのことは、意外にむずかしいのではないか、ということがあげられます。

「受けやすいが、受かりにくい」それが社会人入試の本質のような気がします。

 あくまで、受験機会が増えるだけと、とらえていたほうがいいと思います。甘い考えは禁物です。


7.合格後のことも考えて

 社会人入試に合格した場合、当たり前のことですが、3年間、学校に通わなければなりません。 そして、それをクリアしないことには、看護婦・看護士にはなれません。

問題になりそうな部分をいくつかあげてみます。

@経済的な裏付け
3年間、基本的には、収入は期待できません。
その辺の準備はどうでしょうか。

もちろん、奨学金等を利用することもできますが、もらえない場合もあります。

そして、この点は、おそらく面接でも、つっこまれること必至です。


A学力面でのハンデの克服
レギュラーコースでの授業は、高校レベルの知識を前提として行われるものがあります。

ですから、社会人入試では課されなくても、一般科目についてはなんらかの勉強をしておかないと、入ってからの苦労が倍化されることも考えられます。

一応、覚悟だけはしておいてください。


B小さい子供がいる場合
社会人入試を受ける人の中では、主婦の占める割合は大きいのではないかと思われます。

その場合、小さい子供のいる方も、かなりいるのではないでしょうか。

普段や急病の場合に、面倒をみてくれる人や施設が、確保できているかどうか、は大きな問題です。

看護学校側としては、学業に専念できる人を取りたいわけです。
でも、小さい子供がいるということは、その点でリスクがあるということになります。

ですから、看護学校側の不安を取り除くためには、具体的な対処方法が準備できているということを示す必要があります。

面接対策という部分もありますが、実際に学生生活を続けていくためにも、必要なことです。

受験前から、このことについては、考えておいてください。


8.最 後 に

すでに書きましたが、社会人入試は「受けやすいが、受かりにくい」ものではないかと、思っています。

でも、チャンスの一つであることは、間違えありません。
積極的に利用しましょう。

ただ、これだけに賭けるのは危険です。
言いたいことは、このことだけです。

※個別のことについては、必ず自分の手で確認をとってください!


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