裏ページ ポチものがたり

11.ポチタロ2〜タローの真実


朝の喫煙所。
ポチとタローにとって、ここで一服しないことには、一日が始まらない。

ポチが、いつものように、缶コーヒー片手に、来てみると、珍しく、タローが先にいた。
栄養ドリンク片手に・・。

ポ:「よお。じじくさいもの飲んでるなあ。」
タ:「(微笑しながら)たまにはね。」


タ:「夜、スナックで働いてるから・・」
ポ:「・・・・・・。」

それだけで、全部わかったような気がした。


タローは、学校の近くの病院で、働いている。
その病院では、学生が多く、勉強という点では、恵まれている。

進学コース用の勉強会があり、先輩たちから受け継いできた過去問も、かなり蓄積されている。

また、学生は、2か月ごとに、勤務病棟が変わっていく。いろいろな診療科を経験させようという病院側の親心。

さらに、ドクターが講師となっての、疾病についての勉強会まである。

おまけに、日勤だけで、夜勤をする必要もなく、学校でのテスト前になれば、休ませてももらえる。

もし、欠点があるとすれば、給料が安いことだけ。

でも、それで、文句を言うようなら、バチがあたるかもしれない・・・。

タローが、そんな病院を選んだ理由は、「自分にとって、一番勉強になる所」だからということしか、考えられなかった。


ポチも、心を動かされないわけではなかったが、一人暮しで、生活がかかっている以上、そういう選択はできなかった。



それも、タローが家庭環境に恵まれていれば、特に、問題は生じないことだったけれども・・。

タローは、母親と高校生の妹の3人暮らし。

いったん、社会に出たタローが、それまでの、一家の暮らしを支えていた。

看護学校に進んだからといって、その状況が改善されるわけもない。

勉強か、収入か・・・。


タローの答えは、両方。
そういうことだった。


「貯金くらいしておけよな」とポチは思うけれど、人のことを言える立場でもない。

まだ、少し時間があったが、教室に行くことにして立ちあがる。

ポ:「とりあえず、無理はするなよな」
タローは、了解という感じで、片手を挙げる。

ポ:「ノート貸してやるから、1時間目は、寝ときな。」
タローは、また、片手を挙げる。

ポ:「お姉さまのノートの又貸しだけどな・・。」
(いい人ぶっても、ポチはポチ・・。^^;)




ある日、Nさんという女の子が、欠席した。
「具合でも悪いのかな?」
そういう声が、聞こえてくる。

タローが休んでも、誰も不思議に思わない。
ポチの場合も、同じような状況らしい・・。^^;

授業が終わって、みんなが、帰ろうとした、そのとき・・。
タローが、教壇に立った。

「実は、Nさんは、おじいさんが危篤になったので、九州に行ったんですけど、もしかしたら、しばらく、学校に来られないかもしれません。すみませんが、Nさんが戻ってきたら、彼女にノートとかを貸してあげてもらえないでしょうか?」

どよめきが起こる。
本来なら、「なぜ、タローが、そんなことを知っているんだ?」というものになるはずなのに・・・。

「タローって、なかなか、いいヤツなんじゃないの」という雰囲気になっていた。
一人(一匹)を除いては・・。

ポチの心の中:
「だったら、自分で、ノートとれよな・・」

(ポチに欠けているもの:「人のふり見て、我がふり直せ」)


タローは、同級生思いのいいヤツという評価が定着したが、さぼりぐせが直ったわけではなかった。

それに、Nさんって、タローの彼女なんだよね。
(クラスの中で、ポチのみぞ知る・・・。)

To be continued.
(本当に、まだ続くのか・・・。^^;)


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