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「視覚障害リハビリテーション」

 みなさんは、「視覚障害リハビリテーション」というものをご存知でしょうか?
と、書いてはみたものの、おそらく、それほど認知度は高くないのでは、と思います。

 一般の方には、まあ、やむを得ないことのような気もしますが、これからナースになる方たち(もちろん現役の方もそうですけど)には、是非知っておいて欲しいという願いを込めて、このコーナーを書きました。 とりあえず、最後まで、お読みください。



 言葉からくるイメージとしては、なんだか「視力回復」のようなものを思い浮かべるかもしれませんが、そういう意味でのリハビリではありません。

では、具体的には、どんなことをするのかというと、


「白杖(はくじょう)による歩行訓練」

「点字の読み書きの訓練」

「日常生活訓練」

「音声ワープロなどの訓練」

「ロービジョン訓練」


 等々があります。(これが、すべてでは、ありませんが。)

それぞれを、簡単に説明しますと、

「白杖(はくじょう)による歩行訓練」は、言葉の通りに、視覚に障害を持っている方が、白杖(白い杖のことです。)を使って歩行できるようにするための訓練です。

 白杖自体は、魔法の杖ではありませんから、それを使って歩くのには、訓練や練習が必要になります。


「点字の読み書きの訓練」
 書きについては、点字そのものは割と覚えやすいものです。ただ、「分かち書き」と呼ばれる、文章の区切り方のルールは、覚えるのがちょっと大変です。日本語って難しいということが実感できます。

 読み(触読=しょくどく)については、正直言って、身に付けるまでに、かなり根気が必要です。また、書きはある程度独学も可能なのですが、読みに関しては指導者について教わることが必要だと思われます。

 
「日常生活訓練」
 突然、視覚からの情報を使えない状況になったと仮定してみてください。もしかすると、いろいろなことが、できなくなってしまうのではないかというイメージがわいてくるかもしれません。

 しかし、実際は「今までのやり方では、できなくなる」というものが多いということです。ですから、新たな方法を身に付ける必要があります。そのために行うのが、「日常生活訓練」です。 内容は、その人の必要性などによって変わってきます。
 
「音声ワープロなどの訓練」
 これは、専用のソフトや音声合成装置などを活用して、パソコンやワープロを操作する。そのための訓練です。 ただ、最近は音声入力・出力に関するソフトが、一般用(?)としても市販されるようになってきましたから、それらの活用も考慮しなければならないようになってきた気がします。

(以前は、「DOSで動く専用のソフト+別に用意する必要がある音声合成装置」というのが、必須だったのですが、時代は変わりつつあるようです。)


「ロービジョン訓練」
 これは、見えづらい状況を少しでも改善する訓練や工夫などのことです。くどいようですが、これは視力の回復ということではありません。念のため。

 例えば、中心暗点という症状があります。中心部分が見えないような状況ということです。

 中心部というのは、もっとも視力が良い部分です。そのためか、人は物を見ようとするときは、通常中心部で見ようとします。

 しかし、中心暗点があったとしたら、見ようとすればするほど、見えなくなってしまうわけです。文字を見ようとする場合には、特にそうなりやすいわけです。

 そのような人には、中心部からほんのちょっとずれた位置でものを見るような訓練が、必要になります。




 「視覚障害リハビリテーション」の概略くらいは、理解していただけたでしょうか?

 で、ここからが本題です。

 みなさんにお願いしたいのは、上記のようなことを行って欲しいということではありません。

 「視覚障害リハビリテーションワーカー(通称RB)」という専門家がちゃんといますから。

 (※RBは、まだ正式な資格とはなっていません。そのため、活躍の場がまだ限られているのが現状です。 ただ、「国立身体障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害専門職員養成課程」などで地道に養成されています。)

 少し話がそれました。
 みなさんが、現場に出てから、上記のリハビリが必要かもしれないと思われる患者さんに接したとき、「視覚障害リハビリテーション」というものがありますよ、ということと、 その概略を情報として伝えて欲しいんです。

 さらに、「見え方の改善」の工夫というものを試してもらいたいとも思っています。

 例えば、白内障という疾患があります。これは、水晶体が白濁してくるものですが、加齢現象の1つでもあります。 (要するに、ある程度以上の年齢の方には、多かれ少なかれ、白濁はあるということです。)
※手術をされた方は、そのことによって改善されますから、のぞいて考えてます。

 そのような場合には、「まぶしさ」というのもが問題になってきます。
 通常、文字は、白い紙に黒い文字というパターンで提供されます。

 ところが、白地だとまぶしくて見づらいという方は多くいます。
 で、黒地に白文字という白黒反転というものを行うと、見やすくなったりします。
(人によっては、見づらくなる場合もあります。)

 ※このページが、その白黒反転の見本です。

 また、照明の位置なども、考慮すべきものです。

 照明からの光が、前方からくると、まぶしく感じます。これが、後方からだと、まぶしさは改善されます。
 明るすぎる部屋・状況というのが、逆効果になる場合というのも結構あるものです。


 以上にあげたのは、あくまで1つの例です。どんな場合でも有効というわけではありません。

 そして、もう一つ、白黒反転で「よく見える」ようになったとしても、それは、視力が回復したのではなく、「見え方」が変わっただけのことです。 (その意味合いは大きいとは思いますが。)




 ここで、書いてきたようなことは、案外医療関係者にも知られていません。
「視覚障害リハビリテーション」などと言ってみたところで、ドクターや看護学校の先生などには、「なんだそれ?」みたいな反応をされる可能性が高いでしょう。

 最後に、

 自分は眼科で仕事をする気はないから関係ない、と思う方もいるかもしれませんが、 高齢者に接しないわけにはいかないでしょう。そうなると、白内障の問題などは無視できません。

 また、DM(糖尿病)の患者さんも多くいます。DMの三大合併症の一つは、網膜症です。 これは、失明原因の上位に入るものですし、増加する可能性(危険性)も指摘されています。

 ですから、情報として、おさえておいてください。


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