実  習



 看護学生時代の実習は、誰もが辛いと言います。

 だけど、臨床でなかなか感じなかった事を深く感じることが沢山あるのです。

 現役で看護婦として働いていく中で忘れがちなこと多いにあります。

 そんな時、学生時代の頃を振り返ります。

 ここで、進学コース時代の実習で受け持った患者さんそして、私が感じた事を書きます。



基礎実習編

 Yさん    年齢 82歳  男性
 病名は、うっ血性心不全 急性増悪期で入院。

 実習初日、初対面である私に笑顔で冗談を言いながらあいさつされ、こちらが緊張 しないよう接してくれた。
 その時、Yさんの方が気を使っていた様に感じられた。

 しかし、表情には疲労感が伺え、話しをするにも呼吸が荒くなったり、息切れが多く あったりと不安定さがあり、又、点滴、酸素、モニター装着していた。

 Yさんは「拘束されている」と訴え、身体的苦痛と治療によるストレスで当たり場の ない現状であったと思われた。

 Yさんは、この点滴さえなければ自由になる という気持ちでいっぱいであったろうに 、その時の私は、 点滴をしなければ回復できない と言う気持ちがあり Yさんと私の考え方のズレで、どのようにYさんへ接すればよいのか考え込んでしまった。

 しかし、このYさんとの関わりで、本当の患者さんの気持ちがどれだけのものか と言う事 を教えてもらった。


ここで、Yさんと私の会話での振り返りについて書きます。

               
1.Yさん「人生82年かぁ〜」

2.感じたこと。。どうしてそんな弱気な事を言うのだろう 。

3.私「まだ人生終わってないじゃないですか」

4.Yさん「だいたいが心臓が弱くなっとるもん。どうせこれからよーならんとばい」

5.感じたこと。。今、治療を受けて回復しようと言う時に そんな弱気なことを考えてはけないなぁ〜ん。。。どう言葉をかけていいか分からない。 なぜ、そんな気持ちになっているのか聴いてみよう。       

6.私「どうして、そう思われるのですか?」

7.Yさん「予想がつくから分かる。だから点滴とかせんでいい。引き抜こうごたる。」

8.感じたこと。。点滴を1日眺めての生活は、やはりストレスを感じてるんだろうなぁ〜
 でも、治療しないと前進しない。本人へ分かってもらう為には、どうしたら良いのだろうかぁ〜

9.私「Yさんの気持ちは、分かります。点滴やチューブがずっとついてると自由は利かないし、すごくきついですよね。でも、ちゃんと点滴を受けないと又、入院してきた時みたいにきついですよ。」

10.Yさん「あー達は、患者さんの訴えを聴いて書物すればいいだけじゃろうけど、それはもの凄い苦痛です。多分、私だけではなく他の患者さんも同じ。しかし、こんなきつい治療でも、元の生活に戻りたいと言う気持ちがあるから我慢して受けよるとです。」

11.感じたこと。。点滴を強く拒否し、弱気な事を言ってたけど、実は治療に対して渋々でも理解してたのか?では、今までの言動は、ストレスでの言動だったのか? 自分でYさんのことを分かったような事を言ってしまったぁ。

12.私「ちゃんと分かって治療を受けてあったんですね 。一方的に何も知らずに言ってしまいました。。。。。すみません。」



 考察・結果・評価

 1の発言でどのように答えてよいか分からず3でしか言葉を返せない状況であった。

 Yさんとしては、それが表面的な言葉に映った為4の言葉が出たと考えられる。

 4の言葉に対し只、今の状況に弱気になっていると思い込み、弱気になっている原因を表出させようと6の言葉が出ている。

 7の言葉で弱気になっているという原因に対し本当のYさんの精神的苦痛を理解しようとせず、一方的に治療拒否と受けとめ、治療によるストレスよりも、治療を優先させるような9の言葉となっている。

 元々、治療に対し不満を話しているのに治療を押し付けるような言葉であった為に10で本当の気持ちを学生へ話し精神的、身体的苦痛がどれだけのものかということを表出している。

 12で反対に教えてもらい、自分自身の未熟さ感じてしまっている。

 この場面でYさんの治療に対する不満は、認識不足による治療拒否と受けとめ、点滴やチューブ、モニター装着による行動制限又、安静に対するストレスを理解しようとせず、9の言葉が出た事にYさんが治療を受けているのは自分であって、身体的苦痛、精神的ストレスが蓄積し、これから先のことを考えても不安があるのは自分なのに病人役割をしていない苦痛や悲しみも感じてない学生に9の言葉を言われ、今まで積もっていた、治療に対するストレスとして10の言葉を表出した様に思える。

 1,4,7の言葉は、渋々ではあるが治療を受けている不満を話す事により、ストレスを軽減する言葉であって10の言葉で本当に拒否しているのではなかった事を知りYさんの心理を理解せず、表面的な関わりでYさんの訴えを聴いていた事が分かる。

 訴えを傾聴するだけでも、Yさんの気持ちを吐き出す事が出来、不満やストレスを軽減出来たのでは、なかったかと思われた。


  

 成人内科実習(終末期)
 Hさん 65歳 男性
 病名 肝硬変 肝臓癌 ターミナル期 (終末期)

 私が受け持った時は、肺まで癌が転移しており、黄疸による全身掻痒感(かゆみ)浮腫や腹水が著名に見られた。

「息苦しい・・ハァッ、ハァッ 呼吸が楽になる薬を出してもらいたい」と付き添って いる奥さんに訴えていた。

 又、息苦しさ、易疲労がある為に自ら側臥位(横向き)になったり腹臥位(うつ伏せ)、座位になったりし落ち着かなくなっていた。

 腹水で横隔膜圧迫により呼吸運動を阻害していること、肺がんによる呼吸面積の縮小による呼吸困難は、想像出来ない程の苦痛と全身のかゆみで「夜は、あまり眠れんです・・」と話された。

 この様な状態の時。。。看護は、どうしたら良いのだろう?

 Hさんは、私には遠慮して何も訴えてこない。
「元々が昭和一桁生まれの我慢強い人」だと奥さんは、話された。
(家族にしか訴えない・・当たり前の心境だろう)


 呼吸困難の時は,ファーラー位が楽と教科書的には、書いてあった。

 しかし、実際ファーラー位にすると「余計。。キツイ・・」と咳込みながら訴えられた。

 どうして?だろう。。分からない

 Hさんは、一番楽な姿勢は水平臥位だと言われた。

 よくよく考えてみると、腹部膨満による苦痛に対してもっとも安楽な体位は水平臥位が基底面積を広がげる為,圧迫感を軽減するのだ。

 なぜ、Hさんが切迫気味に水平臥位でいいと言ったのかがやっと分かった。


 受け持ちから数日後、家族の強い希望もあり腹水穿刺(水抜き)をされた。。。

 その日は、呼吸もスヤスヤで日中入眠で過ごされ、Hさんにとってこの一時が安楽であっただろう。。。

 その日から日が経たない間に再び呼吸苦が増していた。
 腹水も増大していたからだ・・

 また、尿量も無尿(排泄全くない状態)で症状は増悪していた。


 最後の日。。。

 Hさんの呼吸苦時、「ハッー、ハッー」と言っている時・・・どんなに怖くて不安であったろう。。。

 私は、ただHさんの手を握りしめるくらいしかできなかった。
 ちょうど、奥さんが病室に居ない時であった。

 結果的には、そのまま臨死された。
 受け持ってちょうど1週間目であった。

 Hさんを看取ったのだが、Hさんの最後の気持ちを私自身まだつかめていなかった。

 しかし、Hさんにとって家族に看てもらったという事がなによりもの安らぎだったような気がする。


 担当の教務に、アンテナをはってもう少し、Hさんの心理面を掴むべきであったと言われた。

 ただただ、苦痛であったに違いなくもちろん恐怖もあったに違いない。
 また、早く楽になりたいと言う気持ちもあったのかもしれない。

本当のHさんの心理面を掴めなかったことは、後悔である。。。




精神科実習編

 Tさん 58歳 女性
 病名 慢性分裂病

 Tさんは、入退院を繰り返し何十年と長い入院生活を送っている古い分裂病の患者さんである。

 入院生活の中でのTさんは、病棟活動やレクレーションに積極的に参加され毎日の日課である薬杯の水くみも自分の役割としてきちんと行えていた。

 また、精神状態は、安定しており今の状態を現状維持していけることが望ましいと思われた。

 しかし、自らスタッフや他の患者さんと交流を持とうとしない、同室者からの散歩の誘いも断り対人関係を自ら避けているといった傾向にあり、必要以外に部屋へこもりがちであった。

 でも、それがTさんの生活スタイルであり今の状態を維持させているペースではないかと考えた。

 この事で、Tさんの生活パターンを維持しながら学生が関わり生活を楽しめる様な援助、方向性で考えていたのだが、しかし、Tさんは人に気を使ったり合わせると言った行動が苦手のようであった。

 学生(私)がTさんに関わることはTさんにとってかなり刺激反応してしまうことであっただろう。

 この為、Tさんとの距離は近過ぎず距離を置きながらもTさんの様子を伺った。

 時々、Tさんの部屋へ訪室し同室者を混えながらの会話が殆どであったがその中でもTさんのちょっとした興味を示す反応が返ってきた時には自分自身嬉しかった。

 ちょっとした話題として外に居る猫や咲いている花の話しをすると「どこに咲いてました?何匹くらいいました?」といった反応が返ってきた・・・

 会話こそは長くはないがちょっとした会話の弾みがあるとTさんの興味を引き出せた感じがしたのだ。


 慢性期の中でも生活が固定している患者さんとの関わり方を試みることで患者さんのペースを少しでも知る機会が出来た。

 精神科の患者さんにとってどういう影響があるからいいという答えがないことの難しさ(自分で模索しながら関わっていくこと)を改めて感じた。

 自分のペース(看護者のペース)ではなく患者さんのペース合わせと言ったことを学んだ実習だったと思う。




成人内科実習(健康指導)
 Mさん 64歳 女性
 病名 慢性閉塞性動脈硬化症

 Mさんは、慢性閉塞性動脈硬化症で右足部感染性潰瘍悪化になり右大腿部切断術を施行していた。

 元々、高血圧症もあり昔から酒・タバコを嗜好品とし食事の味も辛くて濃いめといったMさんなりの生活習慣があった。

 これは、動脈硬化の発生因子と関連性が強く考えられ又、脳梗塞の既往もあった。

 今回の疾患からも動脈硬化による合併症と考えられた。


 切断後そんなに日が経ってないのに表情が冴えなかったり、悲観的な言動があったりと言ったことがなく「先生の言う事を聴かんかったからこんなになった・・バチがあたった」と言うことを話し自分自身の中で克服しようとしていた。

 切断前が凄い激痛の日々だったそうで切断後からは、あの激痛の日々よりは良いとも話していた。

 リハビリも積極的に参加され、PTの先生や他の患者さんと交流をもったりとよく笑顔も見られた。

 部屋にこもりがちといったこともなく「自分でせんといかん」という思いが強くあったようで、不安や自信喪失の感情は出現してなかった。

 しかし、
 Mさんは右大腿切断前よりDrよりタバコを止められていたが、同室者よりタバコをもらったりして吸っておりMさん自身も「タバコはやめられない」と話していた。

 健側の左足背部動脈触知でもやや動脈が触れにくく血流の流れもおもわしくない。

 この為、左足も右足と同じく合併症を起こす可能性が考えられ予防の為にもMさんと共に健康管理での学習をしていく事を考えたのだがMさんは「タバコを吸っても今どうなることでもない」「何十年と吸っているのに突然止められるわけがない」という発言がありあまり 人から言われるのを好まない個性のハッキリした患者さんであった。

 どう指導していっていいものか分からずにいた。。。


 タバコはMさんがストレスと感じない程度に関わりMさんが知っているタバコの影響を聴きながら不足している部分を補足して説明し、その時の反応やその後のタバコの本数を観察した。

 最終的にはパンフレットを作成して説明すると、疾患とタバコについては関心気な反応は、みられたがそれからMさんがどういった行動をとるかというとこまでは関われず、実習は終わった。

 この実習で感じたことは、看護者の立場で患者さんへ指導する時の関わりの難しさを思い知らされた。

 患者さんとの人間関係が成立しない事には余計に指導は困難であり、その人間関係を築き上げていくまでには、時間がかかり段階がある事を実際を通して感じた。

 看護者が患者さんへ求める変わり、患者さんも看護者に求めるそういったバランスが必要。

 でも、そのバランスをとって行くのは看護者の腕で決まってくるのだと考えるとやはり、慢性疾患の患者さんへの指導の難しさ強く感じ勉強になった。




母性実習編

 母性は、苦手意識があった。
 実際、母性実習が始まる前凄く不安でしょうがなかったのを思いだす。

 特に、範囲が広く妊娠・産褥・新生児と各段階を追って看護過程での展開をしていかなかければならなかったこと、その他に退院時指導や保健指導などの媒体や指導案・指導計画などの作成など、母性が苦手な私は・・・結構、こたえた実習であった。

 しかし、得るものは大きかった・・・


 実習初日より産褥2日目の褥婦さんを受け持った。

 どういうとこから観察して良いか迷いがあった。教科書や参考文献(たまごクラブ等)を見ている内に一つ一つ仕組みが分かってきて、毎日の褥婦さんの身体の変化を知っていくといった感じであった。

 しかし、受け持ちの褥婦さんの個別性を全体的に把握できずにいた(ここで大変突っ込まれた)

 新生児にしても一日一日の変化が著しく、又母子間の関係の築きを確立していくといった事を目にすると自分自身、同じ女性として子供を産み、母としての役割を果たしていく流れを受けとめ、過程を知ることが出来た。


 2週目より切迫早産で点滴治療を受けている妊婦さんを受け持った。

 行動制限を要し、セルフケアを行えない為、清潔保持が出来ないこと又、その他の欲求を満たせないことで精神的ストレスを生じやすい環境で胎児をお腹の中で育てていかなければいけない状況であった。

 こういった中での関わり・・・

 自分自身、最初どのように関わっていけば良いのか迷った。

 しかし、洗髪や清拭、足浴を通しての関わりやバイタルサインチェク時に赤ちゃんの話しや分娩についての話をすることで妊婦さん自身よく不安や心配事を話してくれ、「キツイね。。。」と本音をポツリ。

 又「私が守らないと」と力強い言葉で話され、母性と言う本当の意味を感じさせた言葉であった。

 女性にしか出来ない事、赤ちゃんをお腹の中で育て産み、自分の乳で育て母子の関係を確立していくといった母性とは、女性の心の中を強くさせる気持ちもあるのだと感じた。

「自分が赤ちゃんを守らないと」と言う気持ちは大事なことである。
 改めて、母性実習で実感した。


セルフケア:
 洗面・更衣・食事・排泄などの日常生活行為の事。

切迫早産:
 早産の恐れがあっても、安静と治療によって妊娠の継続が可能な状態を切迫早産と言う。
 この時点で、なんとしても早産を食い止めなければいけない状態であり、安静を第一にこころがけないといけない。
 必要であれば、子宮収縮剤を服用、または点滴をすることになる。


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