指 導 室  1.小論文の部屋

ここでは、小論文についての、自分なりの考えや対処法を書いてみます。
本当は、いろいろと注意する点があるとは思いますが、覚えるのも使いこなすのも大変なので、ポイントをしぼって説明します。
あくまで参考例としてとらえていただければと思っています。


@小論文とは何か

 いろいろな定義ができますが、個人的には「自分の意見を納得してもらうために書く文章」だと思っています。
 小論文=説得文ということです。

 ※小論文と作文とは、あきらかに違うのですが、看護学校によっては、この辺があいまいなっているような気がします。小論文といいながら、感想を求めているとしか思えないような課題になっている場合がありますから。



A小論文の構成

まず、意見(言いたいこと)を明確に示します。
 ↓
その意見の根拠や理由をあげていきます。
2つ、3つは必要かもしれませんが、その数は、指定字数などによって変わってきます。
その際、具体例や体験談も取り入れるとよいでしょう。
 ↓
その後に、自分とは反対の意見・自分の意見のデメリットについてふれます。そして、もちろん、そのことに対する反論をします。ですから、反論しやすい反対意見・デメリットを一つだけあげるようにするのが得策です。
 ↓
そして、最後に、再び、自分の意見を結論として強調してしめくくります。



わかりやすくするために、具体例をあげてみましょう。
テーマは「がん告知」で、意見としては賛成という立場ということにします。
 
まず、自分の意見です。
「がん告知には賛成である。」
 ↓
「なぜならば・・・
・インフォームドコンセント(説明と同意)の観点に立てば、がん告知は、説明にあたる。よって、告知しなければ、説明を放棄したことになる。
・その人自身にかかわる重要な情報を隠さず伝えることは、その人の人生は、その人が決めるべきという、いわゆる自己決定を尊重することにつながる。」
 などが理由としてあげられると思います。

※実際に、副作用を伴う抗がん剤の使用にあたっては、医師側に説明義務があるとした裁判所の判決が出ています。(1999.9.16東京高裁)
 このようなことも書ければ、日頃からこのようなことに関心があり、きちんと勉強(情報収集)しているということを間接的にアピールできるという効果も期待できます。ちなみに、新聞に載っていたことです。

そして、体験談もしくは具体例です。
・身近にがんにかかった人がいた場合。
 がん告知したのであれば、してよかったと思われることがあるあはずなのでそのことについて書く。
 がん告知していないのであれば、そのことによって、後悔したことがあるはずなので、そのことについて書く。

・体験談と呼べるものがない場合。
 新聞で読んだ、テレビで見た、人から聞いたことなどを書く。

 自分自身、以前ホスピスの見学に行ったときに、そこの婦長さんから、「告知をしないと、うそをついているという罪悪感からか、患者と家族・医療者との間に一体感がうまれない。」と聞いたことがあります。
 こういうようなことを書くのも良いと思います。
 ↓
反対意見や自分の意見のデメリットと思われることにふれます。
「もちろん、告知されたことにより、ショックを受け、闘病意欲を失う人がいることも考えられる。」
などと、自分の意見にもデメリットや欠点があることをわかっていますよ、とほのめかします。

※自分の意見が正しいということを書くのが小論文の目的ですが、自分の意見は完璧だなどという態度では、反感を買います。
 また、世の中のことをよく知らない頭でっかち・机上の空論などと思われてしまう危険性があります。

それから、反対意見やデメリットに対しては、反論をします。
少なくとも、疑問を投げかけるくらいはする必要があります。

「しかし、そのような場合でも、告知そのものが問題であるのか、精神的なフォローまで含めた問題なのかを、きちんと検討する必要があるのではないだろうか。」

※実際には、告知しない方がよいのでは、と思われるケースもあるでしょう。
 ただ、その点にもふれてしまうと、自分の意見(主張)が揺れ動き、どっちつかずになってしまう怖れがあります。反論しづらいことは、無視するというのも一つの方法です。
 ↓
最後に、もう一度、自分の意見を書いてしめくくります。


※採点する人の意見と自分のものとが食い違ったらどうしよう、と考える人もいるかもしれません。
 でも、小論文とは、違う意見の人にも納得してもらえるようにするというのが、本来の目的ですから、きちんと書けているかどうかということが重要です。
 要は、「なるほど」とか、「この考えは、筋が通っている」と思わせればいいだけです。



B小論文練習の注意点

・とにかく書くことです。書かなくては、小論文は上達しません。
 そして、例えば400字を書くのに、どれ位の時間がかかるのか、どれ位のアイデア(ネタ)があれば、書ききれるのか、そのようなことをつかんでください。

・誰かに読んでもらう。
 その際には、疑問点がないかどうか、ということを聞いてください。
 できの良し悪しだけを尋ねても、あまりあてになりませんし、次の小論文を書くときの参考にもなりませんので。
 (良いと言う場合にはどこが良いのか、悪いと言う場合には、どこが悪いのかというところまで、聞いてください。)

・一つの文は短く。
 これは、よく言われていることですが、ついつい長くなりがちです。目安としては、3行から4行までを限度としてください。

・決意表明やきれいごとは避ける。
 例えば「将来、立派な看護婦になれるようにがんばりたいと思います。」というのは、本来、小論文に書く内容ではありません。
 どうしても、書く必要がある場合には、「立派な」とは具体的にはどういうことなのか、「がんばる」とは具体的にはどのようにがんばるのかということまで、書かなくてはいけないでしょう。
 感想文ならば、かまわないのですが・・・。

・日頃から問題意識を持つ。
 今回は、がん告知について、賛成という立場で考えてみました。
 では、反対の立場だったとしたら、その根拠や理由は、どのようなものになるのでしょうか。
 なんらかのテーマに対して、自分の本来の意見が賛成だとしたら、反対の立場での根拠・理由も考えてみる。もともと反対だったら、賛成の立場での根拠・理由も考えてみる。
 このようなことを日頃からクセづけておきましょう。



 以上に書いたことは、あくまで一つの意見・提案にしかすぎません。
 自分自身、文章を書くことに対して、特に自信があるというわけではありませんので。
 ここに書いてあることが、なんだかしっくりこないと感じる方や、もっと詳しく知りたい方は、市販の「小論文の書き方」というようなタイトルの本で、勉強してみてください。


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